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「沖縄で教育にモリンガを取り入れようとしている人がいるんだよ」
そんなお話を聞いた時、正直「え?教育に取り入れる??」と半信半疑に・・・
どんなお話が伺えるのかも分からぬままに向かった先は、那覇市内の塾の一室。
ここで子どもたちに無料塾を提供するNPOを運営している坂さんから伺ったのは、モリンガを使って子どもの新たな可能性を引き出すための試みでした。沖縄で暮らす子どもたちの未来を切り拓くプロジェクト、坂さんの熱い想いに胸を打たれました。(研究員MIKI)

本来は勉強したい欲求があるのに、経済的な事情などによって勉強ができる環境にない・・・実は沖縄にこういう環境の子どもがとても多く、これが沖縄にとっての負の遺産になるのではないかと気がつきました。
子供の学力低下が引き起こす県内の経済活動停滞、そこから引き起こる治安の悪化など・・・教育が足りないことによる負の遺産は県内の多方面に悪影響を及ぼしかねないと。
子どもたちは勉強をするようになって学力も少しずつ上がってきて、そんな時に塾で三者面談を行うと、勉強する気になってくれた子どもの可能性を聞いて親御さんも安心と喜びを覚える。でもその先にもっと勉強するために、追加の授業が必要になり、どうしてもお金の話がついてくる・・・当然、喜んでいた親御さんの顔が一転して曇ってしまうのです。誰が悪いわけではない、そういう経済状況にある人が多いということなのです。
そんな経験が何度もあって、もどかしくて無力感を感じてきたのですが、そうだ、こういう子どもたちを受け入れられる場所を作ったら良いのではないか?そう気がつきました。
独立開業してから10年後くらいでしょうか、エンカレッジという無料塾を立ち上げました。
勉強したいのに勉強できる環境にない子どもたちがたくさんいること、そんな子どもたちを救い上げることが沖縄の学力向上につながり負の遺産を減らせる、そういう概念を社会全体で共有できればと思い、一念発起。とにかく沖縄の子供たちの未来を守ろうと、意識の共有と教育の大切さが沖縄の未来につながるという啓蒙に必死に力を注ぎましたね。
無料の塾!?ということで、色々な方にもご心配をおかけしましたし、最初の頃は妻の顔色も曇ってしまったりして・・・
始めてから4年間くらいまでは完全に自費で活動を行って、それは大変な思いをしました。
今では行政とタッグを組んで、離島をはじめ24ヶ所、1100名のお子さんを受け入れています。あまり良くない環境で育ってきた子どもが多いので劇的に能力が上がるということではないですが、確実に進学率が上がってきている実感があり、この活動の向こう側に未来があるのではないかと思えるようになりました。

通常の塾と同じように勉強を指導することはもちろん、先ほどお伝えしたようにあまり良くない環境で育った子どもが多いこともあって、社会性に乏しいことが傾向として現れています。
塾は、学力を伸ばすことはもちろん、生活力の向上があると思っています。
生活力が低い子どもは体験格差が要因となっていることが多いので、社会性を向上させるために多くの「体験」ができる機会を設ける必要があると考えました。それが体験学習です。
具体的には塾のメンバーと先生が一緒に合宿に行って、社会性の向上や多くの体験を積むのです。学習以外の色々な知識や体験をサポートすることで、社会性は確実に向上します。
社会性が向上するということで、個々に経済力がつく可能性があるんです。
例えば一つの商品を収穫から製品化、マーケティング、販売ルートの検討・確保までをトータルで学び、体験するような、そんなイメージです。実際に先日も宮古島で子どもたちとブランディングについても学びを講義してきました。マーケティングやブランディングを学ぶことは一種のキャリア教育でもあります。
その中で、沖縄でも多く収穫されているモリンガは、教材として良いのではないかと考えたのです。

自分でも毎日飲んでいるのですが、モリンガという植物は栄養価も高く、CO2を吸収することから環境にも優しく、生育も早いので生産しやすくて沖縄で生産が可能と良いことづくめで、環境・栄養・農業の側面からも注目の植物。モリンガであれば沖縄に居ながらにして、生産から商品開発、販売までのビジネスをワンストップで体験することもできるし、社会性・経済性など多くの学びが得られると考えたのです。
経済的に厳しい状況を抱える子どもにとって、食べられない状況は栄養不足につながります。栄養価の高い食材であること、環境問題にもフォーカスできる点で社会性が高いことなど、子どもたちの抱える問題に対してのソリューションとなりうる可能性があるのがモリンガでした。
畑に収穫へ行くところは未だ実現していないのですが、今後の展開のために、まずは子どもたちにモリンガを学ぶという刺激を与えている段階です。
教育というのは共に育んでいくことだと考えているので、モリンガを教材として自分たちで育てて考えて、最終的には大手企業などと一緒に環境問題に取り組むような商材開発なども実現できるのではないかと思います。
すぐに実現できるわけではないかもしれませんが、焦らずじっくりと、子どもたちと共に進めていけたら良いかと。

通っている子どもたちが、今、感謝の言葉を述べるようなことはありません。それで良いと思っているんです。今、彼らが過ごす時間、得た経験や体験が10年後、20年後に自身への変化に繋がってくれたら、それが一番の喜びになると思います。
実際に塾スタッフの面接をすると、卒業生が来てくれることがあるんです。先生たちとの関わりを感じて戻ってきてくれていると思うと、今通ってくる子どもたちにも良い影響を与えてくれるのではないかと。
行政とタッグを組んでいることもあり、生活保護を受ける親御さんをご紹介されて、そのお子さんたちが通うようになることも多いのですが、子どもたちの中にはマイナスからのスタートをせざるを得ない子も多く、目線を少し下げて3段階くらいからスタートしようとしても、マイナスからのスタートでは3でもついてこられずに辞めてしまう子ども出てきてしまう。マイナスの子どもにはマイナスの関わり方が必要で。そこから寄り添っていくことが必要なのだということも学びました。
諦めず寄り添っていくことで0から1にもなっていくということですね。
子どもは本当にまっさらなんです。体験学習のような教育があればどんどんと良い方向に変化が生まれます。
まずはモリンガを題材として商品企画から栽培、製品化、販売までの一連のプロセスの体験学習を始めて行こうと考えています。沖縄県内に居ながらにして一気通貫でビジネスが成り立つ商材というのは多くないので、まさに学びの機会には適していると思いますし、社会課題解決の意識向上やビジネススキルの習得に繋がってくれればと。
モリンガを活用することで、子どもの未来を紡いでいきたいと思っています。

NPO法人エンカレッジ 理事長 坂 晴紀(さか・はるき)
沖縄県那覇市出身。塾を運営する中で、沖縄県内の学力を向上させる必要があると気づき、2008年に子どもたちが無料で塾に通うことのできる通塾支援を行う「NPO法人エンカレッジ」を設立し理事長に就任。2025年現在、離島を含め15市町村24ヶ所で学習支援を行う。
第40回琉球新報活動賞「教育活動部門」、第52回社会貢献支援財団「社会貢献者表彰」受賞。