沖縄でモリンガを育てる〜モリンガとの出会いで人生が変わった

沖縄でモリンガを育てる〜モリンガとの出会いで人生が変わった

「モリンガには、もっと可能性があるはずだ」
照れながらそんなことを言うモリンガ生産者の下地さんには、溢れでる笑みの合間に、キリリと鋭い本気の眼差しを感じる瞬間がありました。自生も可能なほど丈夫なモリンガを、丁寧に愛情をもって育て、手作業で収穫を行い、収穫する時間にまで配慮する。これほどまでにこだわるのには、モリンガに魅了された下地さんだからこその深い愛情がなせる技。海外のセレブリティからも注目を集め、国連世界食糧計画(WFP)が採用したミラクルフードのモリンガについて、沖縄のモリンガ畑にてお話しを伺ってきました。(研究員MIKI)

―モリンガに出会ったきっかけは

元々、フィリピンのセブ島で事業を行っていたんですが、持病の糖尿病が悪化して・・・本当に辛い思いをしながらもビジネスは進めないといけない。体調不良のままフィリピンに通う日々が続いていたんです。そんな時に現地で知り合ったドクターから「試しにモリンガ飲んでみたら?」と勧められたのがきっかけです。そのドクターが自身の畑で栽培しているものだと聞いて、まぁそれなら安全そうだからと半信半疑で飲み始めてみたら・・・糖尿を表す数値が驚くほど改善されて、これはもう手放せない!と。
今ではその時のご縁があって、ドクターが運営していた現地の畑と工場を引き継がせていただいて、モリンガ事業を展開するようになりました。

―下地さんのモリンガは特徴的と聞きました

モリンガを飲んだことのある人は、「あ〜、あのクセのある味のやつね・・・」と、モリンガ独特のエグ味を思い出して、顔を歪めてしまうんです。これでは、モリンガがどんなに健康に良くても飲んでもらえないですよね。
そもそもモリンガというのは葉の部分は栄養価が高くて、特化した栄養素も入っているんです。茎の方も繊維質が強いという特徴があって。色々と研究して試した結果、これは葉っぱだけを使用した方が、味も栄養価も絶対的にクオリティが高くなるんじゃないかと。
ハイクラスなモリンガブランドであるARINGA MORINGAの原材料は、全面的にうちのモリンガを使用してもらっていますが、多くの方から「普通のお茶みたいで飲みやすい」「エグ味が全然ない!」というお声があると聞いています。そこに至るまでには、製造工程にすごく手間がかかっているからなんですけどね(笑)。

―どんな手間がかかっているのですか

色々と試行錯誤してたどり着いたのは、エグ味のもとが茎だったということが分かったんです。
ワインなんかは皮も使って、それが良い渋みになって総合的にワインの味になっていると思いますが、モリンガも同じ。茎を一緒に使っても、葉だけ使ってもモリンガはモリンガ。でも、やっぱり味が気になると飲んではもらえない・・・ということで、茎を外して葉のみを使用することに決めたんです。
でも、想像してください・・・茎から葉だけを外す機械なんてものはないので、全部手摘みしよう!となって。摘む工程は人の手に頼らざるを得なくなって、時間もコストもかかる。それでも、味にはやっぱりこだわりたい!と思ったんです。
じゃあ、いつ摘むか?となったら、これも色々と研究してみた結果、モリンガは朝に一番栄養が蓄えられているということが分かってきて、朝2時間くらいで素早く収穫作業をするようになりました。

―こだわった理由は味だけですか?

朝摘みと、葉のみの利点はもう一つあって、新鮮なモリンガをその日の中に乾燥して粉砕までできるということなんです。
フレッシュな状態で出荷したい、という点もあるのですが、そもそもモリンガって熱に弱いので、長時間乾燥や高温乾燥すると栄養素が失われたりするんです。色々な温度と時間の組み合わせで何通りも乾燥させてみて、実際にデータをとって研究して得られた結果、モリンガにとって最適な温度と時間を見つけ、低温乾燥で短時間乾燥させることがポイントでした。その上、葉は茎と比較すると、乾燥時間短く乾燥温度も低くてOK。葉のみというのは、まさに一石二鳥だったんです。その温度と時間?それは企業秘密です(笑)。
乾燥後にパウダーにする工程でも、熱と光に当てないようにしています。これは、光に当たるとモリンガが酸化してしまうので、商品の劣化につながります。とにかく朝から作業して、その日のうちに終わらせることが必須なんです。
ただ、「手間もコストも、ここまでやるか!?」と色んな人に言われてきて、ちょっと機械入れたり茎入れたりしちゃおうかな・・・と挫折しそうになったこともあります。でも、とにかく多くの栄養素を高い状態で抽出したい、という思いだけでコストも手間も度外視してここまでやってきました。その代わりに、これだけ丁寧に作業すれば多くの栄養価が抽出できるというエビデンスも得られましたし、実際に自分で試したら、血圧の数値は1週間で改善されました。今では血圧の薬とはおさらばです!

―このモリンガにそんなに手間がかかっているんですね

モリンガは強い植物なので、摘んだら2〜3日でまた生えてくるんです。普通の農業で考えると収穫って年に一度くらいのペースのものが多いと思いますが、モリンガは月一回ペースでの収穫が可能です。水さえ与えていれば、だいたい3年くらいで大人のモリンガの木になるんです。それだけすくすく育ってくれて、栄養素も高いのですから、製品にする時にはやっぱり手間暇かけて、最大限にポテンシャルを活かしてあげなければいけないと思っているんです。
モリンガはインドが発祥の地とも言われていて、この畑も、フィリピンから持ってきた種で育てはじめました。最近では、沖縄でもパラパラと畑を始める人がいますが、まだまだ沖縄産の種でモリンガを作るというところまで完全にはできていない状況です。目指しているのは沖縄の畑でモリンガを育てながら種までつけて、その種を植えて発芽させて純正の沖縄産モリンガを広めることです。やはりその土地にあったモリンガを作るというのが、私たちの命題ですからね。

―沖縄産モリンガ、楽しみですね

モリンガには、まだまだ多くの可能性を感じるんです。沖縄ってシングルマザーが多く、なかなか仕事の場所も見つからないし、生活にも苦労している人がけっこういて。そういう意味でモリンガは、収穫は朝から2時間だからシングルマザーなんかでも参加しやすいし、子連れでもお年寄りでも落ちこぼれでもできる仕事で、どんな人にでも就労しやすい、そういう産業だと思うんです。今後は生産から製造、販売までを一貫して行なっていけるようになれば、就労機会も就労場所も幅が広がって、誇りを持てる仕事になる。色んな人に就労の場所として活用してもらいたいし、多くの人にモリンガの強さとすばらしさを伝えていきたい。ゆくゆくはフランスのワイナリーみたいに、世界中の人が自分の畑に見学に来てもらえるような場所にしたいという夢があるんです、ちょっと照れますけどね(笑)。

【プロフィール】

株式会社Jiva 代表取締役 下地直樹(しもじ・なおき)

沖縄県出身。飲食店や塾経営などの事業を展開する中でモリンガと出会い、自身の体調改善の体験からモリンガ生産の事業を本格化。現在はARINGA MORINGAへの原材料供給だけでなく、自社ブランドでの商品展開も検討。今後はモリンガを活用した新たな雇用創出や地域貢献をも視野に入れる。